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麻疹(はしか)予防接種をしっかり受けましょう!

江戸時代に始まった七五三のお宮参り。この子の七つのお祝いにお札を納めに参ります・・・・。 麻疹は、子供の命を奪う病の代表格。 おかげ様でこの病、無事通り越すことができました・・・。 麻疹は「ましんの命定め」言われたぐらい、恐れられた病気でした。
そして現代。予防接種のおかげで、世界で1980年には260万人いた死亡者が、2015年には13万人まで減少しています。



Q1. 広島県で、2017年1~2月にかけ11名の集団感染が発生したと聞きましたが・・・

A1. 広島県では、国内発症が無くなった翌年(2011年)以降においては、輸入例の報告が散見されていましたが、 2017年1~2月に11人の集団感染がおこりました。



広島県内の報告数

Q2. 実際どのような状況だったのですか?

A2. 2017年1月29日インドネシアから帰国した麻疹患者(9か月の乳児)が、帰国日に立ち寄ったスーパーマーケットで、偶然に居合わせた女性(20代女性、ワクチン接種歴1回)に2次感染し、そこからさらに3次感染、4次感染して、保育所や家族内へ感染が広がりました。



Q3. 日本全国の患者数の推移はどうなっていますか?

A3. 2006年(2006年~2008年の大流行の初めの年)に麻疹に対する対策を強化しました。1回の接種を2回に改め、全医療機関に対し麻疹の届け出を義務化し、さらにウイルスの遺伝子検査を義務化するという内容でした。 これらの政策等が、この大流行を終息に導き、麻疹患者はこれを機に一気に減少しました。 そして2010年には土着株も無くなり、2015年には土着株が3年間検出されないとしてWHOより「麻疹排除国」と認定されました。よって、現在、患者から検出されるウイルスは、すべて輸入株です

◇土着株と輸入株:同じ遺伝子型の麻疹ウイルス株が、国内で1年以上継続的に伝播していれば「土着株」と言い、土着株以外を「輸入株」と言います。

◇排除認定:適切なサーベイランス(感染症監視)の下で、土着株の発生が3年以上なければ、WHOより「麻疹排除国」と認定されます。

全国:1979年以降の麻疹患者の数

◇1979~2008年は、患者把握体制が不十分だったため、 実際の患者数はこの約10倍の数と推測されます。

◇2012年283人、2013年283人、2014年 453人、2015年35人、2016年165人です。



Q4. 世界の状況は?

A4. 死亡者数は1980年には260万人が、 2015年には13万人まで減少していますが、南東アジア地域、西太平洋地域、アフリカ地域からは、近年は毎年約3万~6万件の麻疹患者の報告が上がっています。
アメリカ大陸は全域排除されています。西太平洋地域では日本、韓国、モンゴル、カンボジア、ブルネイ、マカオ、オーストラリアも排除されています。 ヨーロッパ地域でもフランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、ポーランド、ルーマニアの6か国以外は排除国に認定されています(2016年10月現在)。 しかし、これらの排除国においても、輸入株による感染や小流行は起こっており、各国対策に追われているのが現状です。

南東アジア地域とはインドネシア、タイ、ミヤンマー、インド、バングラデシュ、スリランカ、ネパールなどを、西太平洋地域とは日本、中国、モンゴル、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリアなどを指します。



Q5. 土着株や輸入株など、麻疹ウイルスにはいろいろあるようですが・・・

A5. 麻疹のウイルスはA~Hの8群と24遺伝子型があります(A群、B群1~3、C群1,2、D群1~11、E群、F群、G群1~3、H群1,2 )。 さらにそれぞれの遺伝子型が発生地の名称をかぶせたタイプに分類されます(例:D 5パラオ)。
ちなみに、ワクチンはA群より作られますが、どの群の麻疹にも効果があります



Q6. 日本で、土着株はいつごろまで見られましたか?

A6. 1980年台はD3とD5パラオが流行しました。その後は、D5バンコクが国内に土着し、約4年間流行していました。 しかしD5バンコクも2010年5月の報告を最後に途絶えました。 以降は、H1, D9, D4, D8などの輸入株が多く検出されています。



国内における土着株、輸入株の検出の推移

Q7. 最近は、どのような輸入株が検出されていますか?

A7. 日本国内で2017年1月~5月末までに、D8 が126件、B3 が5件、H1が2件検出されています。 15歳~50歳の年齢の旅行者が旅行先でもらったものが多く、また最多のD8は、そのほとんどがインドネシアから入ってきたことが分かっています。



年齢群

<2017年1月~5月28日までの麻疹患者 133名>

Q8. どのようにして感染しますか?

A8. 「接触感染」や「ひまつ感染」(咳やくしゃみの時に飛び散る微細なしぶき)もありますが、主な感染様式は、ウイルスが小さいために地上に落下せず、空気中を浮遊して感染する「空気感染」です。 よって、マスクでの予防は難しく、感染予防には、人込みに行かず、自宅待機が一番と言うことになります



Q9. 「潜伏期間」や「人にうつす期間」は?

A9. ウイルスをもらってから発病するまでの期間(いわゆる潜伏期間)は10~12日です。
一方、「人に移す期間」は、麻疹の場合「熱が出る1日前から、解熱後3日間」と言われています。従って、「人に移す期間」に患者と同じ場所に居合わせたひとは、麻疹にかかっている可能性があります



Q10. 麻疹の典型的な症状はどのようなものですか?

A10. 典型的な麻疹は 発熱、カタル(風邪)症状、発疹の3つ症状が揃います。

初期(カタル期):
発熱
風邪症状(=カタル症状:咳、鼻、くしゃみ)
③目の充血や目やに
④口の中の白色の小さな斑点が出ます(必ず出るとは限りませんが・・・)

中期(発疹期):
熱が3日続いて一旦下がり、半日後に熱が再び出る時に、発疹が出始めます。発疹は顔から出始まり、のちに体幹部、手足まで広がります。

後期(回復期): 発疹は黒ずんでしばらく残ります。

症状

Q11. 麻疹にかかるとどのような合併症が出ますか?

A11. ➀肺炎は1人/10人の割合で発症し、うち1%(発展途上国においては10~30%)が死亡します。死亡するのは幼児がほとんどです。
②脳炎脳症 は1人/千人の割合で発症し、うち10%が死亡、70%に後遺症を残します。
③遅発性脳炎(SSPE)は1人/10万人の割合で、感染から平均数年後に発症し、のちほぼ全員が植物状態となって死亡します。
多くは2歳以下に感染した小児です。



Q12. 感染しても症状が出ないことがありますか?

A12. 感染すれば、ほぼ100%何らかの症状が出ます。典型的な症状が出れば、「麻疹」。非典型的な症状であれば、「修飾麻疹」と呼びます。つまり軽い麻疹のことです。



Q13. 麻疹の診断は難しいですか?

A13. 典型的な症状なら診断は可能ですが、 非典型的な「修飾麻疹」を症状からだけで診断するのは困難です。
一般には、症状に「周辺に患者が発生している」、「外国(麻疹流行地)からの帰り」、「潜伏期間」、「年齢」、「その人のワクチン接種歴」などの情報をあわせて麻疹を疑い、 最終的には血液検査(遺伝子検査)で診断します。



Q14. 「修飾麻疹」の診断は重要ですか?

A14. 感染源となるため重要です。 2016年度患者165名中、約三分の一は修飾麻疹でした。
“患者と居合わせただけでほぼ100%うつると言っても、私はワクチンを打っているのでかかるはずがない。ましてや発疹もないし、ただの風邪だ!” などと自己判断していると、知らず知らずのうちに、自らが感染源になっていることもあり得ます。



湿疹患者

Q15. 修飾麻疹はどんな人に見られることが多いですか?

A15. 抗体価が十分高ければその人は「麻疹にかからず」、 反対に抗体が無ければそのひとは「典型的な麻疹」にかかります。そして、抗体価が不十分であれば「修飾麻疹」に かかることになります。

◇抗体価が十分高いとは128倍(ないしは256倍)以上を指します。

【感染した時に修飾麻疹となりやすい人】
・ワクチン接種1回で、年月とともに抗体の力が減弱した人
・ワクチン接種2回でも、抗体が十分つかなかったと考えられる人
・0歳児(母乳から乳児に移行した抗体が不完全に残った乳児)など



Q16. 予防接種をしていても、麻疹や修飾麻疹にかかることがありますか?

A16. 2016年度の患者165名で見ると、 28%が接種歴なし、24%が1回接種、15%が2回接種、残りは接種歴不明となっています。 以上より、接種してもかかっている人が多いことが分かります。 これは予防接種をしていても、抗体の力が十分維持されていないことを意味しています。



麻疹患者の予防接種歴

Q17. 自分が、予防接種を何回したか分かりますか?

A17. 国の勧め通りに接種を受けて場合の、接種回数は以下のようになります。

【予防接種回数の目安】

昭和54年4月1日以前に生まれた人・・・・ 0回
昭和54年4月2日~平成2年 4月1日に生まれた人・・・・・1回
平成2年4月2日~7年4月1日に生まれた人(高校3年生時に2回目)・2回
平成7年4月2日~12年4月1日に生まれた人(中学1年生時に2回目)・2回
平成12年4月2日~ 小学校1年生・・・・・・・・・・・・・・・2回
就学1年前~就学前日 (2回目の接種期間)・・・・・・・・・1~2回
2歳~就学1年前・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・1回
1歳~2歳未満(1回目の接種期間)・・・・・・・・・ 0~1回
1歳未満・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 0回



Q18. 実際、みんな2回受けたのでしょうか?

A18. 麻疹風疹の予防接種の接種状況を厚労省の資料で調べることができます。 それより計算すると下表のようになります。 「人口の95%以上が予防接種を受けないと、流行は阻止できない」とされていますが、日本の場合いずれの年齢層も95%に達していません。

【予防接種を2回受けている人の割合 全国平均 】

平成2年4月2日~ 7年4月1日に生まれた人(高校3年生時に2回目)・79.6%
平成7年4月2日~12年4月1日に生まれた人(中学1年生時に2回目)・87.1%
平成14年4月2日 ~ 現在小学校1年生・・・・・・・92.2%
就学1年前~就学前日 ・・・92.9%(2016年就学時現在)



Q19. 麻疹ワクチンは安全ですか?

A19. 大変安全です。麻疹ワクチンは生ワクチンを弱毒化したものであるため、体内でわずかに増殖し、接種して5~14日目に、以下のような症状が現れることがあります。 しかし心配はいりません。

①約数~10%に一過性の発熱
②約数%に一過性の発疹
*肺炎は起こしません。
*脳炎脳症が100万~150万に1人以下報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでないものも含まれます(厚労省)。またワクチン接種後の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)はないとされています(感染症情報センター)。



Q20. 平素より、私たちはどうしたらよいですか?

A20. ①子供には、麻疹の予防接種を必ず受けさせること。 ②1回しか打っていない人は2回接種をすること(自費にはなりますが・・・)。③ 妊娠前に抗体価を測定し、抗体価が低ければ、 妊娠一か月以上前に接種すること。できたらお父さんも一緒に。 すでに妊娠しているのであれば、産後に接種すること ④海外旅行をする場合には(アジア、近年は特にインドネシア)、抗体を調べ抗体が無いか低ければ、接種しておくことが望ましいです。



Q21. 実際、麻疹が発生したときには、どうしたらよいですか?

A21. 麻疹が日本国内で発生があった場合、まず医師が(疑いであっても)速やかに保健所に連絡をとることになっています。その後、保健所や県の感染症の対策部署(CDCといいます)が中心となって、他へ感染が広がらないよう迅速に対策をとる体制になっています。その時は、慌てず安心して、そこの指示に従うことが大切です。




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